お茶の香りと働きについて

お茶の香りについてのお話です。緑茶の香りは単独のものではなく、およそ300種類以上の香り成分が含まれているとされています。その大部分は日本の研究者によつて確認されたものです。たくさんの香り成分が含まれていますが機械で分析した香りの成分の濃度と私たちがお茶を飲むときの香りの感じているわけではありません。また、同じ茶の樹からできるウーロン茶や紅茶に比べて緑茶の香りの強さは控えめで、種類も少ないという特徴があります。これは茶を製造する段階で、摘採した生葉を蒸して製造する緑茶の製造法ゆえんによるものです。

○香りが発生する仕組み

茶生葉中にはいろいろな酵素(タンパク質)が含まれています。香り成分の多くは、多糖類と呼ばれる物質に結合しています。この結合を切り離す役目を酸素が担っています。ウーロン茶や紅茶では、生葉を蒸さずに萎凋させる工程がありますが、この時にこの酵素が一気に働いてさまざまな香りが生じ、茶葉に蓄積されます。一方、緑茶では、蒸して酵素の動きを止めるために、香りの生成が少なくなりますが、生葉の持つ繊細な香りが生かされているともいえます。またお茶をどんどん酸化させる酵素の働きも蒸すことによって止めてしまいます。緑茶が鮮やかな緑色でもともとの茶葉に含まれていたビタミン類やカテキン類がのままの形で多く残っているのも蒸して酵素の動きを止めたからともいえます。

○香り成分について

緑茶に含まれる代表的な香り成分として、緑の香り(新茶の香り)とされる青葉アルコール・アルデヒド花の様な香りのリナロール、ゲラニオール、はちみつの香りに似たベンジルアルコール、甘く重厚なシスージャスモン、メチルジャスモネートヨノン類などがあります。玉露や抹茶のように、茶園に覆いをし、日光を遮って栽培した茶葉には、青ノリのような独特の香りがします。これは「覆い香」と呼ばれる香りで、ジメチルスルフィドという成分です。ジメチルスルフィドは、茶生葉中ではメチルメチオニンスルフォ二ウムクロライドという物質として存在し、茶葉のの加熱によって発生するという特徴を持っています。また焙じ茶の香ばしいさは、茶葉を焙じることによって生成するピラジンやフラン類などの香り成分が主体となっています。