京都宇治茶はがんに効く?

抗ガン作用

今から25年ほど前に、静岡県のお茶ところ中川根町では胃がんによる年齢調整した死亡比が低く、全国の100に対し、男性では20.8、女性では29.9という驚くべき結果が発表されました。この結果をお茶と関係づけた研究をきっかけに、一躍お茶の抗がん作用の研究が進みました。多くのマウスやラットを使った実験では、発がん剤を投与した動物にお茶を飲ませると、発がん率が減少すること、がん細胞を移植した場合もがんの増殖や転移が抑制されることが示されています。お茶には様々な成分が入っていて健康維持に役立ついろいろな作用がありますが、抗がん作用の主な担い手は、緑茶ポリフェノールであるカテキンの中のエピガロカトキンガレート(EGCG)です。ガン細胞の培養液にEGCGを加えると、細胞の増殖が抑えられたり、細胞が死滅したりします。EGCGがこの作用を示すメカニズムはいくつか考えられますが、主なものはアポトーシスが、がん細胞に誘導することです。アボトーシスは、不要な細胞が除かれていく時に起こる生理的現象ですが、がん細胞を誘導すれば、がん細胞自身を死滅させることができます。実際、このメカニズムで作用する抗がん剤がいくつか知られています。EGCGががん細胞の表面にあるタンパク質に統合すると、その信号が核に伝わってDNAが切断され、細胞が分断されて死滅します。EGCGは正常細胞よりもがん細胞に強くアポトーシスを誘導します。また細胞は細胞周期と呼ばれる過程により細胞分裂を繰り返して増殖しまが、EGCGはこの過程で働く様々な因子に作用して細胞周期を止め、細胞増殖を阻害します。一方、生体内で発生した活性酸素によりDNAに傷が付くことが、がんの原因のひとつですががEGCGは活性酸素を消去する力があり、それにより発がんを抑制することも考えられます。緑茶やカテキンが人に対しても抗がん作用があるかどうかはまだ確定しておりませんが、最近の疫学調査研究でお茶を飲む人は、胃がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、子宮内膜がんなどになる危険性が低かったという報告があり、臨床介入試試験で緑茶カテキンが前立腺がん予防に効果があったという論文もあります。これらのことは今後の臨床試験などでたしかめていく必要があります。最近、緑茶カテキンを軟膏とした製剤が良性篇平上皮膚腫傷の一種である陰部にできるイボ治療剤としてアメリカFDAの許可を受け、現在いくつかの臨床試験により治療効果があることが認められています。